気の毒に思えた

2012.02.08

あくまで人間関係の問題としてそれを調整しようとする私と、彼女の話がまるでかみ合わないのは、当然のこと。彼女にとって許せないのは、その人個人ではなく、そうした人の存在そのものだったんですね。声を荒らげることはないものの、視線が定まらない目で、怒りを押し殺しながらつぶやく彼女は、さながら別の世界の人でした。私はといえば、ただただ、その話を聞くだけしかできません。なぜなら彼女の思考回路は私にとって、解釈はできても、理解することは不可能だったからです。ただその時ふと思ったのは、彼女が生きていくのは、本当にたいへんなことなんだろうな、ということでした。「存在」そのものの否定に向かうのは、他人に対してだけではなく、おそらく自分に対しても同様だと思ったからです。山はどの睡眠剤を飲んだり、手首を切ったりしながら、彼女は自分の存在を必死に消そうとしているのでしょうか。存在そのものがむき出しになっている人生を生きるのは、あまりにたいへんなこと。厚化粧も可能な「顔」があるからこそ、私たちは人とつながり、自分をなだめながら生きていけるのかもしれません。その夜はとことん彼女とつき合い、話を聞きました。忍耐のない私にしては珍しいことです。それだけ彼女の持つ闇が、気の毒に思えたということでしょう。